保育メソッド「主体性を育てる&共育ち」全体構造

これまで、子どもの「主体性」や、子どもどうしが教え合い学び合う「共育ち」の環境をつくる関わり方について、さまざまに情報を発信してきました。

今回は八木の考える保育メソッド「主体性を育てる&共育ち」全体構造をお伝えしたいと思います。

主体性を育てる&共育ち働きかけの三層プラン

子どもの主体性を育て、共育ちを促す保育を計画するためには、上図に示した3つの活動・取り組みが必要です。

この3つの活動は、相互に作用し合う動的なシステムです。

保育の中心は子どものやりたいこと

「子どものやりたいことをやる」ということを保育の中心にします。そうすることで、子どもが活動に自主的・主体的に取り組めるでしょう。その活動を通して、子どもの自主性・主体性を伸ばすことができます。

「子どものやりたいこと」に、必要不可欠な養護と教育を繋げる

「子どものやりたいこと」を実現するためには、安心して生活できる環境づくりや健康管理などの「生活の土台に欠かせない取り組み(養護系)」と、はさみの持ち方や数を数える力などの「必要な学び活動(教育系)」の習得が必要です。

これらのふたつは、それぞれをバラバラに習得するのではなく、子どものやりたいタイミングに合わせて教えれば、子どもは意欲的に身につけることができます。つまり、「子どものやりたいこと」を遊び・生活の中心に据えて、必要な教育・養護はその遊びの中に取り込むシステムにすると、子どもの自主的・主体的に取り組む姿勢が、自然と築かれていくのです。

次に、その具体的な方法をご説明します。

「子どものやりたいこと」を実現する保育環境の整え方
■ポイント1
個々の子どもが、それぞれやりたいことやお気に入りの遊びを自ら選べるようにすること、また、集中して取り組める環境をつくりましょう。

環境をつくる際は、男女の好みや保育的価値を考慮しましょう。
具体的には、以下の4つの分類の遊びを用意することをおすすめします。
①世話遊び系 ②仕事ごっこ系 ③のりもの系 ④探索・構成・知育系

ポイント2
みんなでまとまってやりたい組織的な遊びや活動・行事は、子どもたちと何をやるかを話し合い、分担を決めましょう。このとき、いつどのようにやるか見通しを立てながら計画表をつくり、計画に沿って進めていく力を育てましょう。

■ポイント3
これらをやれるように環境の整備をしましょう。工作コーナーを設置する必要もあります。

必要なコーナーや工作コーナーの作り方は、以下の記事でご紹介しています。
★クラスの中に、お気に入りの遊び場所をつくる
★すぐに使えるものを保育室に用意する
★工作コーナーは保育者の居場所の隣に設置する

「必要な学び活動(教育)」のために
■ポイント1
「子どものやりたいこと」を通して、文字や数字の読み書き、図形・計算、位置空間、日時、話し合いや問題解決の仕方などの協同学習の基礎になる学びに取り組みましょう。

具体的な方法は、以下の記事でご紹介しています。
★運動会やお散歩などの生活の中で、上下左右を教える
★ごっこ遊びで、メニュー表や園内で使える通貨コインを作る
★絵本づくりやおうちごっこなどで使う手作りノートを作る(8/2更新予定)
★子どもが園内ニュースを作る
★ごっこ遊びで、時計を使う
★司会者を立てて、話し合う力を育てる
★問題解決の仕方を身につける1
★問題解決の仕方を身につける2
★ごっこ遊びで、問題解決の仕方を身につける
★はさみの使い方を教える
★描画のスキルと手指の力を育てる

また、園外で体験したことを、遊びに組み込む体験も取り入れましょう。
★動物園見学のあとに、造形活動を行う

■ポイント2
文字の読み書きや時計の読み方などの国語・算数的活動や、縄跳び・跳び箱など運動系、リズムに合わせて歌う、楽器を演奏するなどの音楽的活動などは、積み重ねを必要とする活動です。それをすべて「子どものやりたいこと」の中に組み込むことは難しいため、独立的な活動として設定し、積み重ねて力を育てましょう。
ただ、こういった体験を、逆に遊びに取り入れるやり方で、スキルアップをはかることも可能です。
★運動会前には「合わせる活動」を遊びの中で行う

■ポイント3
保護者・地域の方々による読み聞かせや演奏を聞かせたり、習い事などへの取り組みを呼びかけたりしましょう。
★発想力、表現力、記憶力を伸ばすために、劇鑑賞の機会を活用する

「生活の土台に欠かせない取り組み(養護)」のために
■ポイント1
安全、安心、安定の土台になる環境を整備と声かけを行いましょう。

具体的な方法は、以下の記事でご紹介しています。
★いつもの場所にお気に入りのおもちゃがある環境にする
★今日楽しかった遊びを明日も続けられるようする
★1日の終わりに今日楽しかったことを尋ねる
★保育室にいつでも保育者に相談できる安全基地をつくる
★子どもの泣き声が響かない環境をつくる
★場所を離れるときは、黙って立ち去らないようにする
★「〇〇をしたい」と保育者に働きかけてくる子どもへの対応を優先的に行う
★友だちや保育者に喜んでもらう世話遊びを積極的に行う
★インクルーシブ保育を上手に実践する
★屋内、屋外の安全環境。ダイナミックな遊びに伴うリスク管理を行う

■ポイント2
健康管理や、人との関係・生活習慣、お知らせなどの情報を、子どもが自身で確認し、実行できる掲示物を用意しましょう。また、保護者、保育者間、子ども間でも伝え合い、わかり合う環境づくりも必要です。

★友だちの出欠・今日の流れ、手洗いの仕方、当番の流れなどの情報を掲示する
★名前のない遊びに名前をつけて掲示し、遊びを教え合う環境をつくる
★他のグループの取り組みもわかるように掲示する
★保護者に運動会のねらいなどを伝える
★掲示物で保育者どうしで助け合いの関係をつくる

このように、3つの層を相互作用させながら発展させていくように保育をデザインすることが大切なのです。

また、このメソッドですが、春先は特に安心、安全、安定につながる「環境づくり」を軸にし、子どものやりたいことや能力がわかり始める6月以降から、子どものやりたいことを中心に、必要(教育)不可欠(養護)な力を育てるような計画にしていくとよいでしょう。

6月は忙しい時期ですから、保育者は、「特に身につけさせたい必要不可欠なことは何か」を問い、計画・目標をシンプルにするようにしてください。計画・目標がシンプルであれば、子どもは明日何をすればよいのか明確になりますし、保育者も教材準備がしやすくなるでしょう。