「自分がしてほしい保育は何?」ということを常に考えよう!

保育者主導の保育が子どもたちと保育者自身を苦しめている

保育現場には、「家庭とは違う体験をさせることが保育」という固定観念があります。「今日はこの造形活動をしよう、明日は人形劇、明後日は体操…」と毎日違った活動を行うことが、ほとんどの園で常識になっています。

しかし、当の子どもたちはこのような保育を望んでいるのでしょうか。

例えばある子が、今日取り組んで楽しかった工作があったとします。「明日もやりたい」。そう思ったとします。しかし、この「日替わりメニューのような保育」が常識なら、明日は別の活動が待っているので、その工作は片づけられるか持ち帰らされ、保育室も朝と同じ状態に戻されてしまいます。

子どもたちは、翌日何をするかわからないけれど、先生が言う何かをするために、明日も登園するようになります。

保育者主導の活動で生活している子どもたちは、「先生、今日は何をやるの?」「これやっていいの?」「先生が言わかなかったから、やらなかった」などと、常に保育者の指示を待つ子どもになってしまう恐れがあります。

さらに保育者にとってのデメリットもあります。計画通り子どもたちに活動に取り組ませるためには、バタバタと走りまわって、「もうおしまい」「早く!」といつも子どもたちを急かす必要があるかもしれません。

また、翌日の準備のために、持ち帰りで制作の準備を行い、新しい曲、体操、人形劇などを探さなければなりません。そしてピアノや人形劇の練習などに追われることにもなり、ストレスフルな悪循環の生活を送るようになるのです。

今日楽しかったことを明日も続けられる保育に

それでは、どのような保育を目指すといいのでしょうか。それはとても簡単なことです。家庭での子どもの過ごし方を考えてみればいいのです。

家庭でお気に入りの遊びを見つけた子どもは、また明日も明後日も、そのおもちゃを使いたいときに出して遊ぶでしょう。作り途中のものがあれば、「こわさないでね」と父母に伝え、父母もその約束を守り、子どもはまた翌日に続きをします。

園での保育も同じことです。子どもたちが自分のお気に入りの遊びを、明日も明後日もやりたいときにいつでもやれる環境が保障され、その遊びを保障してくれる保育者がいることが大切なのです。

こうしたごく当たり前の環境を保育現場の中につくるという、シンプルな発想に変えるだけで、保育者も子どもたちも、慌ただしい日々から抜け出せます。それは安心・安定した生活を送ることにつながっていきます。