「保育者インタビュー〜自分のやりたい保育とその現実〜」でも紹介していますが、最近、保育の様子をまとめて廊下などに掲示する「ドキュメンテーション」を取り入れている園が増えてきています。
子どもの学びや気づきが保護者に見えるので、保護者との信頼関係をつくることに役立つでしょう。
保護者にとっても、どうして特定の友達関係や遊びに執着しているのか、どうして泣いて帰ってきたのかなどがわかると、安心材料になるうえ、園をサポートしようという意欲をもちやすくなります。
私が監修している園の保育者にも、掲示物の大切さは日頃から伝えてきました。
こととものウェブマガジン「5・6歳児1年間の保育のポイント」でも、少しお伝えしていますね。
子どもたちの活動の設計図、計画表、進め方などを掲示することで、同グループでの情報を共有できるほか、ほかのグループの取り組み方を学ぶこともできます。
ほかにも、身につけたい生活習慣のやり方や手順を、絵や図、文字を用いながら掲示することで、子どもたちは一人ひとりが、保育者に説明されなくても掲示物を見て行動できるようになります。
掲示物としておすすめしたいのは、「今日の予定」「当番のやり方」「道具の片付け方」「話し合いの仕方」などです。
掲示物は、保護者や子どもだけでなく、保育者間にとってもメリットがあります。
自分の保育内容が、別の保育者にもわかることで、保育者どうしの助け合いや教え合いのきっかけになり、園全体の保育の質の向上につながるからです。
誰にでも得意不得意はあるなかで、保育者は多岐にわたる業務をこなし、子どもの求めに応じて現場判断を行っていることでしょう。
そのような経験を重ねることで、子どもへの関わり方は、ようやく見通しがもてるようになるものです。
そのため、保育の仕事は、成功ばかりでなく、失敗も起こるものです。
そのとき、各担任がどのような保育をしているのかわからない状態だと、失敗したあとに保育者を注意することが多くなります。
失敗から学ぶこともありますが、あまりし失敗や注意が続くようでは、保育者のやる気や自信を失わせることになりかねません。
そこで、掲示物の出番なのです。
各担任が、「生活習慣で身につけたいことのやり方や手順」「子どものやりたいこと」「やるべきこと」などを掲示すると、担任以外の保育者などに、活動内容がわかるようになります。
そこで、「こうした方がいいかもね」とアドバイスをすることもできますし、逆に先輩保育者のやり方を参考にすることもできます。さらに、「こういう活動までやったのですが、次はどうしたらいいか迷っていて…」などと、先輩の保育者に相談しやすくなるメリットも。
保育者の仕事を増やすような掲示物ではなく、「生活習慣で身につけたいことのやり方や手順」など、日々の保育をスムーズにする掲示物から始めてみるといいでしょう。