[Report] 一般企業が低リスクで保育事業に参入できる! 「企業による保育施設設置支援セミナー」に参加してきました

「企業主導型保育施設」というものをご存知でしょうか。ひと言で言えば、「一般の企業がつくった認可外保育施設」です。待機児童問題解消の切り札として、2016年度から内閣府が助成事業を実施しています。認可保育施設並の助成金がもらえ、計画段階で申請できるため、「低リスクで一般企業が保育事業に参入するチャンス」として今注目を集めています。

国や自治体も助成事業に力を入れているようで、全国各地で参入を支援するセミナーが開催されています。その現状を探るため、今回はそのうちのひとつ、(公財)東京しごと財団が主催する「企業による保育施設設置セミナー『企業主導型保育施設における立案から開設までの実際と、従業員や地域から支持される施設とは』」に参加してきました。

会場はほぼ満席、保育支援コンサルタントからはリアルな実態が

定員300人のセミナーでしたが、「定員に達したため締め切り」の状態。既に施設設置場所の選定をかなり進めている参加企業もあるようで、セミナー後の質疑応答も時間内に終わらない様子に、関心の高さが伺われました。

まずは保育施設設置・運営に関する支援事業を行う企業のコンサルタントのかたが登壇。施設設置のメリットや開設までの流れを、事例をあげながら解説しました。

印象的だったのは、

「全く保育に関連のない企業でも参入でき、社内福利厚生の充実と企業イメージの向上、事業としての収益化が同時に期待できる」

という点。

(保育施設には従業員だけでなく地域住民にも定員を割り振ることができ、国の助成を受けながら「パパ、ママが安心して働ける職場づくり」と「地域の子どもを預かってくれる企業という企業イメージのアップ」の両立が図れます)。

実際の設置までの流れについては、開設済みの施設の動画も交え、リアルな実態が聞けました。その施設の担当者が、保育園に関して全くの素人だけで事業計画をスタートしたと話したことには驚きました。

話を聞いていると、施設設置のいちばんのハードルかつポイントであるのは、どうやら「物件探し」のようです。大企業などであれば自前で施設を用意できるでしょうが、中小企業の場合は従業員にとって利便性の高い場所にある物件を探す必要があります(本助成事業は中小企業をメインターゲットに据えているようで、中小企業への支援が手厚くなっています)。

しかし、

「駅近で開設に適した1階の物件は家賃が高い」

「検査済証の有無(100平米以上は用途変更が必須なので、検査済証の確認が必要になってくる)」

「近くに屋外の遊技場(公園でも可)が必要」

「そもそも大家さんが保育施設の開設を嫌がる場合もある」

などの壁があり、そのうえで「従業員、地域住民に保育ニーズのある立地か」ということも検討しなければいけません。そうした物件をおさえたうえで、初めて助成事業への申請のステージに上がれるようになります。

逆に、各種申請や開設後の運営については、自治体や関連組織の窓口に相談をしたり、園長や保育士の方々に頼ったりなど、サポートを受ける手段があるようです。ただし、「設置に当たっては『保育所保育指針』をしっかり読み、どんな保育をするのか、保育理念を明確にすることが大前提」とのこと。保育への理解を深めることはマストですね。ちなみに、役所には早めに開設の意思表示をしておくと手続きがスムーズになるようです。

東京都にはユニークな+αの女性制度も。(公財)東京しごと財団担当者の話

内閣府の担当者が事業の概要を説明した後、「東京しごと財団」のかたが登壇。支援の対象となる範囲や申請の流れについて解説をしました。その中でおもしろかったのは、都内に事業所のある企業に対しては、「多摩産の木材を使用した備品を購入した場合には助成金に上乗せがある」という点です。

地域振興などを目的にしているようですが、認可外の保育施設の中にはDIYで備品をそろえるなど資金面で苦労しているところもありますし、高品質なテーブルや椅子、棚などを助成を受けながらそろえられるのは、大きな魅力かもしれません。

※「企業主導型保育事業」の詳細は、(公財)児童育成協会サイトで確認できます。

保育施設設置には企業もある程度の体力が必要ですが、複数企業で協力して設置することもできるようです。

そしてその共同利用情報を、 ウェブで公開しているのも東京都の独自点。施設に空き枠がある企業が情報を掲載し、「従業員向けに保育施設を提供したい」という企業がアプローチすることが可能です。

企業主導型保育施設は、夜勤や休日勤務など多様な仕事スタイルに対応することもできるため、業態の近い企業どうしが連携するなど、新たなシナジーも期待できるかもしれません。

※企業主導型保育施設の共同利用情報は東京しごと財団のサイトで確認できます。

いかがだったでしょうか。2016年の助成事業実施当初には全国でも150弱の施設だったのが、2018年の5月には、2,597施設まで増加しています。

※参考:「公益財団法人 児童育成協会」サイト

企業にとっては新たな人材獲得と事業拡大のチャンスが、仕事を求める保育士にとっては新しい保育園で自分の保育を実現するチャンスが広がっているのではないでしょうか。

今後も拡大が予想される企業主導型保育施設に、注目していきたいと思います。