新年度スタートの時期、保育を安定させるために、どのようなことを心がけるとよいでしょうか。
今回は、4・5歳児クラスにおける、準備や心がけをご紹介します。
「あるがままでいい」とお互いを尊重し合える関わりを
細かな違いによく気づき、自他の出来不出来にも目がいく4・5歳児ですから、4月頃から友だちに対して「違うよ〜!」「変なの!」などと、否定的な態度や陰口が出てくるかもしれません。もしこういった状況が出てきたら、放置しないようにしてください。
4・5歳児の保育で大切なのは、子どもたちがあるがままの姿を、お互いに認め合える状態にすることです。
お互いの違いを認め合えないまま放置すると、いつまでたってもトラブルの絶えないクラスになってしまいます。
とはいえ、お互いの違いを受け入れ、認め合う気持ちは、子どもが自然と身につけられるものではありません。
4・5歳児担当の保育者は、年間を通して、個々の子どもの違いを多様性として認め合い、そのうえで協力し合える能力を子どもたちが身につけられるように、働きかけていきましょう。
方法①
保育者が子どもの話をよく聞いて共感し、解決策を一緒に考えよう
けんかなどのトラブルが起きたとき、保育者は双方の子どもの話をしっかり聞きましょう。
「そうだね」「そうしたかったんだ」「そうできたら嬉しいね」、「ところで○○ちゃんは? そう思ったのか。〇〇ちゃんも、やりたかったんだね」などと、双方の子どもの話をよく聞いて共感しましょう。「〇〇ちゃんが悪いのかも?」などと思っても肩入れすることなく、どちらにも共感することが大切です。
そのうえで、「もう一度どうしたいか話してみようか」「どうしたらいいか一緒に考えてみよう」などと、解決策を一緒に考えます。
大人にとっては、子どもの提案してきた解決策が無謀と感じることがあるかもしれません。そんなときも、できるだけ「いいアイディアを思いついたね。やってみようか?」などと共感して試してみましょう。
非効率な体験に付き合うのは、面倒に思えるかもしれませんが、「先生は、バカにしたり怒ったりしないで向き合ってくれた」という体験が、安心感や信頼感となります。
このように、日々の生活で子どもの気持ちを充足させる関係を築くことで、「自分は尊重されている」と感じることができ、友だちを思いやる気持ちの余裕も生まれていきます。
方法②
子どものひらめきを、ほかの子どもたちにも共有しよう
それぞれの子どもが自己肯定感をもてるように、子どもたちのよいところをほめることが大切なことは言うまでもありませんが、子どもを認める活動は、本人だけでなく、周りの子にも見えるように伝えましょう。
帰りの会で、「〇〇ちゃんが、こんなことを見つけた」と発表したり、「折り紙博士の〇〇くんに相談してみようか?」などと、助言者として活躍してもらったり。このように言葉にする以外にも、書いたり、飾ったりすることでも表現できます。
以前ご紹介した、「名前のない遊びに名前をつける」ことも方法のひとつです。
こうした関わりは、子どもたちの自己肯定感を育てることはもちろん、ほめ・認める保育者の姿自体が、子どもたちにとっては、「いいところ探し」や「問題解決の名人」としてのモデルの姿として参考になる存在となります。
方法3
お気に入りの遊びや友だちをつくるサポートで、
子どもの気持ちを安定させよう
友だちを認められる心の余裕をもつには、それぞれの子どもがお気に入りの遊びや仲良し友だちを見つけられるかどうかにかかっています。
お気に入りの遊びを用意するメリットや用意の仕方は、以前の記事でもご紹介していますので、こちらを参考にしてください。
子どもそれぞれがお気に入りの遊びに没頭し、技術を向上できる環境を整備して、6月頃には各分野で名人、達人、博士と呼ぶ声が出てくるように配慮することで、自己肯定感がうまれます。自分を肯定的に感じられるようになると、友だちの個性やよさを認める余裕が出てきます。
また、気の合う友だちがいることは、園生活を楽しくします。気の合う友だちを見つけていくために、同じ遊びに興味をもつ子どもたちを遊びのグループとして繋いでいくサポートを行いましょう。
※仲間はずれへの対応については、以前ご紹介した記事も参考にしてください。