「エゴ・レジリエンス(エゴレジ)」でめざす「メゲない」保育

「忙しすぎて子どもとしっかり向き合えない……」
「他の保育者や保護者との関係が大変……」
「私は保育に向いていないのでは……」

日々、保育をがんばっていても、そのように感じてしまう場面はあるのではないでしょうか。そこで、発達心理学の専門家、小野寺敦子先生に、メゲない心になるためのキーワード、「エゴ・レジリエンス」について伺いました。

Profile
小野寺 敦子(おのでら あつこ)
目白大学人間学部心理カウンセリング学科教授。専門は発達心理学、人格心理学。子どもの心理の発達について、心理学の領域から研究。その中で「エゴ・レジリエンス」に出合い、社会に向けて提唱している。また、プレスクール「NYこどものくに東京(新宿区西落合)」の理事長を務める。講演、ワークショップ、カウンセリングなどでも精力的に活動中。著書に「『エゴ・レジリエンス』でメゲない自分をつくる本」(一藝社)、「小学生のことが丸ごとわかるキーワード55」(金子書房)など。

保育の仕事は「メゲやすい」?

ー保育に関わる仕事は、やりがいはある。けれども仕事量が多く、多くの人と関わらなければならないため、ストレスも多いようです。

そうですね。どんな仕事でも嫌なことはあると思いますが、私の教え子を含め、多くの保育者などに話を聞くかぎりでは、特にストレスが多いのではないかと私も感じています。
基本的に、学校や幼稚園、保育園の先生というのはとても真面目なかたが多いんですね。そして、自身の目指す「子どもや保育の理想像」というものがあって、「〇〇であるべき」ということを大切にしているんです。それはもちろん大切なことですが、根が真面目なだけに、そこから外れてしまうことは自分にとって許されない。もし、外れてしまったら「自分はどうしてできないんだ」「自分はダメなんだ」と自分を責め、それもストレスになってしまうんです。こうしたことが繰り返されると心がメゲてしまい、さらにひどくなると、うつ状態などになってしまうこともあります。

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ー実際、保育に携わる仕事をして間もなく、辞めてしまうかたもいらっしゃるようです。

これは推測ですが、メゲてしまう心には、子どもの頃からずっと自分の価値を点数や偏差値などの尺度で測られることに慣れてしまっていることが関係しているのではないかと思います。「点数や偏差値は高くあるべき」という親や周りの圧力から、高い点数を取れない自分に価値を感じられず、結果的に自己肯定感が低くなってしまっているという場合があるのではないでしょうか。自己肯定感が低いと、「自分はどうせダメなんだ」という心理から、メゲやすくなってしまいます。