現代の子どもたちの姿やこれからの時代に必要な関わり方について、汐見稔幸先生にインタビューを行いました。今回は、全3回シリーズの3回目です。
ー時代に合った保育を行う園がある一方で、「読み書き計算の詰め込みを強いる園」「過度に運動神経の育成を目指す園」「保育者の指示で管理する一斉保育の園」も多いと思います。なぜ、こういった方針の園は減っていかないのでしょうか。
目に見えやすい力の育成は、保護者からの受けがよいというのが理由のひとつでしょう。
また、「計算力」や「暗記力」など、目に見える力を育むことから、「クリエイティブな力」や「友だちと付き合う力」など、目に見えない力を育てる保育・教育へと方針を変えることに、抵抗があるというのも理由でしょう。
しかし、目に見える力に特化しすぎた保育・教育を受けた子どもたちには、明るい将来は待っていないかもしれません。
というのは、今、世の中は大きく変化しているからです。
産業構造の変化の早い現代は、これまで「常識」だったことが日々急速に変わっています。また、グローバル化や多様化で、地域・宗教・人種などによって違う「常識」をもつ人たちと、交渉し、折り合いをつけていく力が必要な時代です。さらに、今の子どもたちが社会人になるときには、人工知能に仕事をとってかわられるとも言われています。
これからの時代は、多種多様な人と関わる力や人工知能に負けないクリエイティブな発想力が求められます。
「クリエイティブな力」などの目に見えない、だけれども大きな力を蓄えた、子どもたちが世の中や自分自身の人生を支えていく時代です。「計算力」や「暗記力」に特化した教育が、本当にこれからの時代に役立つのか。これらの力が、本当に子どもたちを幸せにするのか。
そういったことを考えて、保育を運営していかなければなりません。
私は、保育・教育制度の改定に携わる立場にありますが、まだ課題も多くあります。
日本の小学校教育では、未だに2+6=■といった形式で問題が出題されています。
一方で、諸外国は、■+■=8といったように、答えはひとつではない問題を教えています。
日本も、まだまだ変わらなくてはいけない。
今後も、保育・教育制度の改善に尽力していきたいと思います。