[保育する生き物 FILE5] オスが主役! タツノオトシゴの保育とは

こんにちは。生き物大好き・ケンタローです。

水の中の生き物で、ユーモラスな子育てをするものといえば、そう、アレです。
「タツノオトシゴ」です。

そもそもこの生き物は何の仲間なのか、ご存知でしょうか。

実はタツノオトシゴは、「魚類」です。
一見、魚と程遠い形をしていますが、よーく見るとちゃんとヒレがあったり、エラがあったりします。

食べ物は小さい甲殻類や魚などで、近くを通り過ぎた瞬間に、その細長い口で、海水ごと吸い込んで食べてしまいます。見かけによらず、結構どう猛なヤツなんです。

世界中に色々な種類がいて、大きさや色、形などのバリエーションが豊富。ゆったりと泳ぐ姿などと相まって、観賞魚としても人気があります。

色々な「タツノオトシゴの仲間」の中でも、ここでは日本でも一般的な「タツノオトシゴ」について取り上げます。

分類 トゲウオ目ヨウジウオ科タツノオトシゴ属
大きさ 全長:約10cm
※種類によって、大きさはかなり異なる
住んでいる場所 日本各地の沿岸部
食べ物 小さな魚、甲殻類など

タツノオトシゴはオスが子供を産む!?

タツノオトシゴは、その姿形だけではなく、とってもユニークな子育てをすることで有名です。

それは、オスが子どもを産む、ということ。

タツノオトシゴ はカップルが決まり、産卵の準備が整うと、メスがオスのお腹の部分にある「育児嚢」と呼ばれる袋に卵を産みつけます。つまり、オスが直接卵を産むわけではなく、メスが産んだ卵を育児嚢で育てるのがオス、というわけです。
タツノオトシゴの体表はゴツゴツしていることが多いのですが、この「育児嚢」の部分は凹凸がなく滑らかなので、メスと簡単に見分けられます。

育児嚢の中はヒダ状になっていて、卵が入ってくるとスポンジ状に変化し、そこに卵がすっぽり収まります。
10日〜6週間後に卵は孵化し、育児嚢の中で稚魚になります。

そして、いよいよ「出産」です。
オスは尻尾を海藻などに巻きつけて固定し、育児嚢から少しずつ稚魚を産んでいきます。

これはその「出産」の映像です。

勢いよく飛び出しているものもいますね(笑)。

生まれた赤ちゃんは、小さいながらも親と同じ姿をしていて、泳いだり、海藻に尻尾を巻きつけたりするなど、親と同じ行動をします。

それにしてもなぜ、「オスが出産」するようになったのでしょうか。
竹内久美子さんの「本当は怖い動物の子育て」(新潮新書)によれば、

そうしてオスが水面付近で育児嚢の入り口を開くと、メスは輸卵管を差し込んで数個の卵を産みます。オスは育児嚢を閉じ、体を揺らして受精を促す。実は育児嚢の一番上の端に精子の出口があり、卵が産み込まれ、通過していくときに受精が起きるのです。
受精はオスの体内で行われるというわけ。これなら、いくら何でも他人の子が育児嚢に紛れ込むということはありえません。

オスが自分の子どもだけを確実に育てるために、わざわざこうした繁殖、保育形態をとるようになった、というのです。

このように「出産」することから、古くから、タツノオトシゴを乾燥させたものを安産のお守りとして重宝されてきました(昔は、子どもを産むタツノオトシゴがオスだとは知られておらず、メスだと考えられていた)。

一方で、中国などでは乾燥させたものを漢方薬や強壮剤などとして使うため、一部の種は乱獲され、数を減らしていると言われています。
また、環境の変化にも強い方ではないようで、日本でも数を減らしているという声もあるようです。

もし海や水族館で見かけることがあったら、その愛らしい様子を優しく見守りたいですね。

子供をお腹に抱えた、タツノオトシゴのお父さんが主人公。他にも、ヨウジウオ、ティラピア、トゲウオなど、オスが子育てする魚たちも登場し、頑張るお父さんの姿を伝えています。エリック・カール独特のカラフルなイラストと、フィルムを使った仕掛けが楽しい絵本。

タツノオトシゴが魚であることや、オスが子供を育てることなどが、オスのタツノオトシゴの一人称で語られます。リアルなイラストと相まって、タツノオトシゴの不思議な生態をわかりやすく学べます。

かわいいタツノオトシゴが、広い海の中(とも言い切れない)の世界を旅する絵本。ページをめくるごとにシーンが大きく切り替わる一方、色はひたすら青く、不思議な世界が広がっています。2歳前後の子どもにちょうどいいかもしれません。