<汐見稔幸先生インタビュー2>〜インターネットだけで完結しないコミュニケーションを〜

現代の子どもたちの姿やこれからの時代に必要な関わり方について、汐見稔幸先生にインタビューを行いました。今回は、全3回シリーズの2回目です。

ー情報社会に生きる子どもたちについて、汐見先生はどのように考えられているか、教えてください。

子どもたちが自分で、インターネットで情報を入手できる時代になりましたね。

インターネットがあれば、自分の関心のあることを素早く知ることができます。

ただし、インターネット上には、歪められた情報や偏った意見も多くあるのが現状です。

インターネットは、自分の知りたいことキーワードを検索して調べたり、興味のある情報が掲載されているSNSなどをフォローして閲覧したりするなど、自分の関心のあることを深く掘り下げる使い方が一般的です。

このとき、「本当かどうか、ほかの人の聞いてみよう」といった、一度は疑問をもつ知性がなければ、インターネットの情報に騙されてしまうことがあるのです。

「インターネットさえあれば、何でもわかる」「人に聞く必要なんてない。人と話すなんて非効率」。

そのように考えてしまうことのない子どもたちを育てることが大切だと思います。

ーそのために、保育者はどのようなことができますか。

「本当かどうかよく調べる」といったことは、保育の中でも活動として取り入れられると思います。

また併せて、「人と話すことのよさ」を実感できる体験がとても大切です。

具体的には、次にあげるような活動です。

1、本当かどうかよく調べる……疑問やテーマについて、子どもたちと一緒に調べる活動。意見を出し合ったり議論したりしながら、さまざまな意見や情報を知ったり、比較検討したりする活動(仲違い時の対応もそのひとつ)。専門家に話を聞く活動。

2、人に教わる・教える……友だちどうしで教え合い、「友だちに聞いたらよくわかった」「いいヒントをもらった」「教えたら喜ばれた」などの気持ちを体験できる活動。祖父母や園長先生などに物事を教わる活動。

、自分の気持ちを話す……「話したらすっきりした」「自分の気持ちをわかってくれる人がいるのはうれしい」と感じられる活動。

人と関わることは、面倒なことではあります。気は使うし、疲れるし、合わせないといけないし。

でも人は、楽をしたときだけでなく「苦労したとき」にも、喜びを感じられるようにできています。

「緊張したし、苦労したけど、人と関わってよかった」「チャレンジしてよかった」。保育での、達成感を感じられる活動や苦労のあとの喜びも、子どもたちが人と関わるときの土台の力になります。