0〜6歳児それぞれの年齢に合った劇活動のポイント

子どもたちに言語力や連帯感が育ってくる12〜2月頃にかけて、劇を演じたり歌ったりするなどの言語中心の連携活動を行う園もあると思います。

私が監修している園では、保育者が子どもたちと一緒に考えながら劇作りを進めています。

CDに収録されている既存のストーリーや歌・セリフ・効果音などに合わせて子どもたちが歌ったり動いたりする劇よりも、発想力、表現力、交渉力、記憶力などを育てられるからです。

とはいえ、「劇作りなんて、難しそう。どうやったらいいの……?」というのが、多くの保育者の思いだと思います。

でも実はそれほど難しいものではありません。具体的な方法をご紹介します。

私がおすすめするのは「既存の絵本などの物語を題材にする」劇です。

なぜなら、これが子どもたちにとって楽しく主体的に取り組めるうえ、劇にも展開しやすいからです。

クラスの子どもたちに、人気の絵本は何でしょうか。その絵本には、繰り返しのシーンや、ピンチに立ち向かう場面があるでしょうか。そのような絵本であると、劇に展開しやすいので特におすすめです。

そういった絵本の中で、子どもたちが気に入っている場面を、子どもたちと繰り返し演じるところからスタートしましょう。

そこから、年齢別の発達に応じて、以下の方法で劇づくりをしていくことをおすすめします。

※「おおきなかぶ」や「三びきのやぎのがらがらどん」を例にご紹介します。

年齢

やること

0〜2歳児

記憶力が未発達で、長いセリフは覚えられません。しかし、「おおきなかぶ」のようなパターンのある物語なら、「うんとこしょ どっこいしょ」のセリフと動きを繰り返し楽しむなかで、(緩やかな)パターン認識ができるようになります

ですから、保育のなかで「おおきなかぶ」を「引っ張る」、「次は、〇〇ちゃんが加わって、うんとこしょどっこいしょの声かけに合わせて引っ張る」のパターンを繰り返し楽しみましょう。

0〜2歳児は、絵本通りの主人公を演じる必要はありません。絵本のイメージを共有しながら、ふり遊びを楽しむのが、0〜2歳児のゴールです。

ですから、きまりの場所をたっぷりやればよくて、前後の流れは省略しても構いません。ナレーションも、保育者がポイントとなる部分をさらっと歌うように行いましょう。

3・4歳児

パターン認識ができるようになる3・4歳児は、0〜2歳児とは逆に、絵本通りの展開を再現することが楽しさにつながります。登場する人物も、順番も、原作通りに展開して、絵本通りのしぐさとセリフを演じましょう。小道具も、絵本に描いてある通りに作ると、「一緒だ!」と劇作りがいっそう楽しくなります。自分の出番まで待ったり、友だちと支え合ったりすることも、楽しいと思えるきっかけを作れるのが、あらすじ通りの劇の魅力です。

4・5歳児

4・5歳児は、絵本通りの展開にはこだわらない年齢。それよりも、ピンチに立ち向かうような場面のセリフを自分たちで変えたり、巧みに交渉したりするような活動をおもしろがります。例えば「三びきのやぎのがらがらどん」のなかで、トロルに食べられないように、巧みな言い訳をして見逃してもらうシーンがあります。この言い訳の別の答えをみんなで考えるといった活動です。その都度セリフを考えて、トロルに対抗する方法を試してみましょう。

とはいえ、言語劇に偏りすぎると、劇の複合的なおもしろさに気づくことができないことも。歌やダンスなどの演技の場面も、子どもたちと相談しながら用意するようにしてください。

5・6歳児

本物らしさを追求することを楽しむ5・6歳児には、原作をリアリティのある劇にしていくということを楽しみます。「おおきなかぶ」の登場人物たちが住んでいる農家の様子や天候、時間、衣装、登場人物の歩き方や動き方を、より本物らしく追求していく体験の中で、探究心や思考力が育っていきます。

かぶの収穫時期は春と冬ですが、劇中の季節がどっちの季節なのかを考えるのもおもしろいでしょう。

また、別の方法として、お話をアレンジして「創作劇」をつくることもおすすめします。「かぶ」をにんじんや魚、かぼちゃに変えたり、表現をミュージカル仕立てにしたりするような変化です。アレンジ力を鍛える育ちにつながります。

また、収穫したかぶをどうしたのかを考えてストーリーを作るのも、とても楽しいアレンジでしょう。

上記を参考に、子どもたちや保育者の負担感も考慮して、園全体で劇作りをしましょう。

5・6歳児は創作劇と決めるよりも、子どもたちや保育者の力や興味に合わせて、できそうなタイミングに挑戦するという方が、楽しく取り組めると思います。

※次回は、劇にしやすく、演じやすい典型的な絵本のパターンについてご紹介します。