[Report] 英語は何歳から? 幼児期の英語教育について学ぶ研修会にお邪魔しました・後編

「NYこどものくに<東京>」で開催された「幼稚園教諭・保育士向け英語研修会」参加レポートの後編です(前編はこちら)。

幼児の英語教育に関する講義を踏まえ、今度は実践編になります。

「そこに英語がある」保育を体験

第2部では「NYこどものくに<東京>」園長の前川先生が登場し、実際に園ではどのような取り組みが行われているのか、その内容を紹介してくれました。

最初は朝のサークルタイムの活動から。

子どもが集まっての出席確認から、英語が登場。子どもごとに違うマークの名前カードを使って、例えば

「♪Acorn(どんぐり), Kazumi, Where are you? Where are you?」

と「ロンドン橋」のメロディに合わせて名前を呼ばれます。子どもは「I’m here!」の返事とともに札を受け取り壁にかけます(今回は受け取る側もいい大人ですが…)。

歌のリズムに合わせることで、楽しく、気持ちよく1日をスタートできます。また、自分の名前とマークを英語(Acornなど)と関連づけられると、子どもはぐっと英語に親しみがわくそうです。

大人でも難しい? グローバルスキルを磨く活動も

続いて、あいさつの歌「Good morning song」、天気の歌「How is the weather?」などの歌を紹介。さらに曜日の概念をもったら「Day of the week」など、発達を踏まえて歌を広げていくとのこと。幼児期に特にふれておきたい「英語の音とリズム」に楽しくふれるためには歌が最適なようです。

特にユニークだったのが、次に紹介された「show&tell」。なんと子どもが自分の大切なものを“みんなの前で発表する”という活動で、グローバル社会で大切な自己主張する力を、2歳の頃から育てていこうというのがねらいのようです。

具体的には以下のように行います。

まず、子どもたちが毎日お気に入りのもの持って登園し、それを箱に入れます。その後サークルタイムで保育士がその1つをチラ見せ。気になる子どもたちは「Show me, please!」とお願いします。

保育士が「Whose is this?」と尋ねると、持ってきた子は得意げに「It’s mine!」と手をあげます(「mine」なんて自分は中学校で初めて目にした記憶が…)。それから、保育士がお気に入りについて質問。質問は、「これはなんですか?」など5W1Hを意識した問いかけ方にし、発表のスキルも伸ばします。

※5W1H:いつ(When)、どこで(Where)、だれが(Who)、なにを(What)、なぜ(Why)、どのように(How)の6つ。これらをおさえると人に伝わりやすい話ができると考えられています。

自分のことばでお気に入りのものについて人に話す。またまわりの子どもたちもその様子を興味をもって聞く。実にすばらしい活動です。

英語教育というと、いわゆる活動をイメージしてしまいますが、こちらの園では普段の生活を密接に結びつけて、「身近に英語がある環境づくり」を心がけているのが印象的でした。これは、「英語を学ぶ」というよりも「英語の音が楽しいと気づく」「異文化に興味がもてる」といった気持ちの部分を重視している方針からきているようです。

子どももあまり英語と日本語を意識していることはなく、英語の活動の中で日本語を話しても、楽しめていればOKとのこと。

英語の読み聞かせ、子どもは理解できる?

英語の読み聞かせでは、結構長い文章の絵本も登場しました。「子どもにわかるの?」と心配しましたが、ある工夫をすれば問題ないとのこと。それは、ジェスチャーに合わせて読み聞かせること。例えば「see」と読んだ時に双眼鏡をのぞくようなジェスチャーをすると、言葉の意味が感覚的に子どもに伝わり、すんなり絵本の世界に入れるのだそうです。

そして、絵本の読み聞かせも、やはりとてもリズミカル。歌うようで、「リズムで楽しく英語の音にふれる」ことが徹底されていました(拍子木を使ってリズムをとるシーンも)。

「外国の絵本は、日本人のイメージとは違う色使いがあったりして、それが異文化にふれるきっかけにもなると思います」。異文化理解のきっかけは、いろいろなところに隠れているんですね。

英語のリズム習得にはジャズがいちばん?

英語教育の手法に、英語の音を歌のリズムにのせて歌う「チャンツ」というものがあります。「NYこどものくに<東京>」では、ユニークな取り組みとして、ジャズのリズムに合わせたチャンツを活用しています。英語は日本語と違ってアクセントの強弱がはっきりしており、その差が理解の壁になるのですが、英語の音のリズムは、ジャズに近いので、ぐっと身につきやすくなるそうです。

※もともとはアメリカ人のキャロライン・グラハム氏が考案したもので、1960年代から実践されるようになりました。

最初は「子どもにジャズ?」という印象でしたが、実際に体験してみると、同じフレーズの繰り返しが心地よく、子どもも大人も一緒になって楽しめるものでした。

例えば「Hi! How are you?」「Fine. How are you?」をリズミカルに言い合う活動。

フレーズはシンプルですが結構速いので、頭で文法とか正しい発音とかを考える前に声を出さなければいけなく、「音で聞こえたままに発音する」という感じです(発音を気にするより、むしろそのほうが聞き取りやすい英語になるそうです)。

テキストを使っての活動も登場しました。

「This Is Blue, This Is a Book」は「This is book.」「This is a book.」「This is a blue book.」「パンパン(手拍子)」とリズミカルに形容詞と名刺を組み合わせていく歌。これは色やものを変えればいくらでもオリジナルのチャンツを作ることができるので、アレンジのしがいがありますね。

チャンツの紹介の中でくり返し前川先生が強調していたのは、「英語は正しい発音よりもリズムが大事」ということ。実際、ネイティブの人からも、「発音が正しくても、リズムが違うと何を言っているのか聞き取りにくい」と言われるそうです。

子どもは言語習得の天才。正しさばかり気にしない!

お別れの歌を歌ってワークショップは終了。最後に質疑応答の時間がありました。

質問に上がったのは「発音に自信がない私が歌ったり絵本を読んだりしてもいいのでしょうか?」。

前川先生は、「いいと思います! くり返せば先生も上手になりますし、この時期は誰かと一緒に英語の音を楽しみ、英語や異文化に親しみをもつようにすることのほうが大切なので。どうしても気になるのであれば、ネイティブの講師の先生などに会う機会に質問してみてもいいでしょう」とのこと。

大人はつい「正しい発音や文法」を気にしがちですが、まずは楽しむことが大切。

子どもは、「抵抗感がない」「違いを楽しめる」という、言葉の習得にいちばん大切な素質をもっているので、正しい発音にこだわり過ぎず、園の先生はその楽しむ気持ちを伸ばすことができればよいのではないでしょうか。

※次回の研修は9月に予定しているとのこと。詳細がわかり次第、またこのサイトで告知します!